馬場 𠮷弘 教授

理工学部 電気工学科

ようこそ、研究室へ

同志社大学ではどんなことが学べるの?どんな先生がいるの?
実際の研究室を訪ねて、先生にお話を聞きました。

複数の物理現象を同時解析する「連成解析法」の開発

こんにちは。馬場先生は今、どんな研究をしているのですか?

馬場先生 電力輸送設備や電気通信設備で生じる異常現象の、解析法の開発を行っています。電気機器や通信製品に想定以上の異常電圧が加わると、壊れることがあります。これを防止するためには、異常電圧に対してのみ低い抵抗を示す、適切な性能を持った酸化亜鉛素子を付加する必要があります。この素子の最適設計には、そこに発生する電圧や電流を高精度で予測解析し、さらに、異常電圧が加わった際に発生する熱や応力も解析しておかなければなりません。このように複数の物理現象を同時に解析することを連成解析といい、私は連成解析法の開発と高精度化に関する研究を行っています。

研究にのめり込んだきっかけ

先生はどうしてこの研究分野に興味を持ったのですか?

馬場先生 物心がついた頃、家に白黒テレビがあったことをかすかに覚えています。それがカラーテレビに替わり、さらにリモコンテレビに替わりました。その後、ビデオ録画デッキも現れました。子どもの頃に、テレビに関わる画期的な変化が3回も起きたわけです。電磁波を受信してカラー動画を再生したり、録画したりできる、このような電気電子通信機器の原理を不思議に思っていました。

研究の道に進むきっかけはテレビだったのですね。

馬場先生 テレビ番組からも強い影響を受けました。淀川長治さん解説の日曜洋画劇場で見た「007」という映画です。英国情報局秘密情報部のジェームズ・ボンドが主人公ですが、奇妙な秘密兵器を開発するユーモアあふれる科学者も出てきます。1970年代の映画の中で、ジェームズが腕時計で電子メールのようなメッセージを受信していたことを今も覚えています。このように、ハードとソフトの両面からテレビの強い影響を受けて、電気電子通信技術に関わる科学者になりたいと思っていました。

いま研究室で推しの学び

研究室の学生たちは、どんな研究をしているのでしょうか?

馬場先生 学生の一人は、自身が作成した連成解析法を用いて、雷撃を受けた炭素繊維強化プラスチック製旅客機の、落雷点付近の発生熱の解析を行っています。旅客機の両翼の中には燃料タンクがあり、そこでの著しい発熱を避けなければならないからです。また、旅客機への雷撃そのものを抑制する技術について検討している学生もいます。雷が落ちると強力な電磁界パルス(※)が発生し、地表面と電離圏(※)の間を反射しながら遠方まで伝わっていきます。地球や電離圏の曲面も考慮した解析を行い、1000km遠方での雷電磁界測定波形の再現に成功した学生もいます。観測点に直接到達する雷電磁界パルスと、電離圏で反射して到達するパルスの時間差から、落雷地点を推定することもできます。※電磁界パルス:パルス状の大電流が流れたときに周囲の空間に放射される電磁波※電離圏:大気の上層部に存在する分子や原子が、太陽からのX線や紫外線などによりプラスとマイナスに電離した領域

この研究が持つ可能性とは

研究室の学生たちは、どのような分野で活躍されていますか?

馬場先生 私たちの研究は、ファラデーの法則やアンペアの法則など、電気工学の基本理論を用いて行われます。このため、研究室の学生は電気現象の根本をよく理解しており、卒業生は電力会社、情報通信会社、電機メーカー、家電メーカー、鉄道会社などを中心に幅広い業界で活躍しています。ハイブリッドカーや電気自動車の開発に興味を持ち、自動車関連の会社を選ぶ学生も増えてきました。また、ゼネコンを選ぶ学生もいます。高層ビルの空調や照明の省エネ設計、電気設備や情報通信設備の設計にも、電気工学科や研究室での学びが生かされていると思います。

馬場先生が思い描く未来

先生の今の目標を教えてください。

馬場先生 毎年、高い基礎学力と意欲を持った学生が研究室に入ってきてくれます。そして、大学院生にもなれば、驚くような勢いで研究を進めていきます。私も必死で研究指導を行っています。過去5年間で、私たちの研究室の成果は、30編以上の論文や短論文として国内外の雑誌に掲載されていますが、学生が第一著者のものがほとんどです。電気電子通信工学の分野で数多くの世界的発明を成し遂げた西澤潤一先生の自叙伝の中に、「優れた発明発見はすべて20歳代に生まれている。」という一文があります。共感するこの一文を心に留めて、研究と教育活動をこれからも続けていくことが私の目標です。

馬場先生からメッセージ

最後に、これから大学への進学を目指している人たちへ、メッセージをお願いします!

馬場先生 若い皆さんには、大いに悩み、考えて、自分の進むべき道を見つけてほしいと思っています。そして、興味のある学部や学科が定まったら、入学試験に向けてしっかりと準備してください。問題を解く時は、模範解答をすぐには見ないで、時間の許す限り徹底的に自分の頭で考えるという訓練をしてください。得られた情報を整理して、諦めることなく忍耐強く考えられる習慣が付いていれば、どのような分野でも、どのような研究開発の場面においても、きっと役立ちます。高い志を持って、ごまかしのない生活を送り、自分の人生を素晴らしい作品にしてほしいと思っています。

馬場先生、本日は様々な質問にお答えいただきありがとうございました!

プロフィール

馬場 𠮷弘

理工学部 電気工学科

1994年東京大学工学部電気工学科卒業、99年同大学大学院修了、博士(工学)取得。同年同志社大学助手。2003年〜04年までフロリダ大学客員研究員。05年同志社大学助教授、12年より同大学教授。米国電気電子学会(IEEE)環境電磁工学部門業績賞受賞。電気学会論文賞、進歩賞および著作賞受賞。IEEE、英国工学技術学会(IET)および電気学会のフェロー。

出身地:
和歌山県
趣味:
読書、家庭菜園、ガーデニング、家族旅行。
休日の過ごし方:
読みたいと思っていた専門外の本や小説を読んだり、小さな家庭菜園の世話をして過ごしています。収穫はその年の天候に大きな影響を受けることや無農薬栽培の難しさを実感します。小さな緑色のイモ虫も、終齢が近づくにつれて急激に巨大化し、中には褐色化し、さらには毛虫化するものもいます。そして、畑の至る所の野菜をつまみ食いします。夏には作業中に蚊に悩まされます。イモ虫が食べる野菜も蚊の刺すところも、一箇所に絞ってもらえないものだろうかと思う時があります。イモ虫たちが食べ残してくれた野菜を家族で食べながら、来年は何を植えようかと考えています。

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