野村 裕美 教授

社会学部 社会福祉学科

ようこそ、研究室へ

同志社大学ではどんなことが学べるの?どんな先生がいるの?
実際の研究室を訪ねて、先生にお話を聞きました。

「人」に寄り添う社会福祉の在り方を探究

こんにちは。野村先生は今、どんな研究をしているのですか?

野村先生 日々の安寧な暮らしを営む上で必要な支援が得られず、要支援状態で放置される要因にもなる「支援の狭間」に埋没する「人」および「家族」に関心を向け、それに対して社会福祉専門職(ソーシャルワーカー)がコンピテンシー(competency)(※)を発揮することで、人々のLIFE(生命、生活、人生)をいかに擁護できるかについて研究しています。※優れた成果を創出する実践力。結果だけではなくプロセスにも注目し、人材育成などに用いられる。

「支援の狭間」にいる人たちを、どうやって支えるのかを研究しているのですね。

野村先生 特に、本来なら支援の対象者であるはずなのに、見つかりにくかったり、関わるのが難しく社会的孤立に追いやられるアルコール依存症の人々に焦点を当て、ソーシャルワークはどのような支援ができるのかについて考えています。

研究にのめり込んだきっかけ

先生はなぜこの分野に興味を持たれたのでしょうか。

野村先生 社会福祉学や心理学など、対人援助に関わる学問に漠然とした興味を持っていました。大学3年生の時に、社会福祉士受験資格取得のための実習で、身体障害者療養施設というところに行きました。そこで、交通事故や傷病により重度の障害を負うこととなった方々と出会い、施設入所前に多くの人たちが病院でソーシャルワーカーに出会っていることを知り、関心をもつようになりました。

その時の経験が、研究者の道を進むきっかけになったのですね。

野村先生 社会福祉士・精神保健福祉士資格を取得し、大学病院等で医療ソーシャルワーカーとして働くこととなりました。病院では“医学モデル”の医療専門職が多い中、傷病の重篤さへの関わりが優先されがちです。傷病の重篤さに関わらず、その人のLIFEを大切に見つめる“生活モデル”の発想を持つソーシャルワーカーは、なくてはならない存在だと認識しています。

いま研究室で推しの学び

先生のゼミでは、どんなことを学べるのでしょうか?

野村先生 アルコール依存症を含むアルコール関連問題についての研究から取り組みます。イッキ飲み、アルハラ(アルコールハラスメント)、急性アルコール中毒、未成年飲酒、飲酒運転など、大学生にとってアルコール関連問題は身近な課題であり、自分たちの課題として認識することから考え始めます。アルコール依存症は、なかなか専門治療につながらない(治療ギャップ)ことが社会問題となっています。どうしてそのような現状なのかを当事者など様々な人と交流し、学んでいきます。

札幌での学会に参加したゼミ生たちの様子。

この研究が持つ可能性とは

そうした学びは、将来、どんなことに役立つと思いますか?

野村先生 お酒に寛容な我が国において、アルコール依存症は誰にも関わりのある事柄です。身体への影響、心への影響、家族や身近な人たちへの影響、そして地域社会への影響等を適切に理解しておくべきです。また、依存症のメカニズムに関するリテラシーには、自分や他者の気持ちに気づいたり、表現しあったりすることも含まれています。いかなる人をも包み込み、安寧な暮らしの回復を支援するソーシャルワーカーにとっては大切な学びにつながると考えています。

野村先生が思い描く未来

先生の今の目標を教えてください。

野村先生 ソーシャルワーカー(社会福祉士や精神保健福祉士)の活躍の場が、ますます広がることを目指しています。ソーシャルワーカーは、「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」でつながり世界中で活動する専門職で、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)は国連へ諮問する資格も有しています。国、地域、分野、立場を超えてソーシャルワークの文化が根付いていくことを祈っています。

野村先生からメッセージ

最後に、これから大学への進学を目指している人たちへ、メッセージをお願いします!

野村先生 社会福祉学科では、人々や社会の諸課題を解決するための価値倫理、専門知識と技術を、少人数で学べる体制を整え、講義、演習、実習の連動を大切にした学びを提供しています。創立者・新島襄の言葉である「一人ひとりを大切にする」教育方針の下、実践の学問をともに学び深めましょう。

野村先生、本日は様々な質問にお答えいただきありがとうございました!

プロフィール

野村 裕美

社会学部 社会福祉学科

同志社大学大学院博士前期課程(文学研究科 社会福祉学専攻)を修了後、市立病院、大学病院にて医療ソーシャルワーカーとして勤務。2005年より同志社大学社会学部に助手として入職し、21年より同教授。現在は教鞭を執る傍ら、公立大学法人長野大学大学院総合福祉学研究科社会福祉学専攻博士後期課程に在籍し、ソーシャルワーカーのコンピテンシー研究に取り組んでいる。日本保健医療社会福祉学会副会長、日本医療ソーシャルワーカー協会社会貢献事業部依存症リカバリーソーシャルワークチーム副委員長、救急認定ソーシャルワーカー認定機構理事なども務める。社会福祉士、精神保健福祉士。

出身地:
神奈川県
趣味:
おいしいコーヒー豆を探して飲むこと。
休日の過ごし方:
外出せず、オンライン会議もせず、家で一日を過ごす。

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