崔 紗華 助教

社会学部 教育文化学科

ようこそ、研究室へ

同志社大学ではどんなことが学べるの?どんな先生がいるの?
実際の研究室を訪ねて、先生にお話を聞きました。

「外交と移民」をテーマとした東アジア国際関係研究

こんにちは。崔先生は今、どんな研究をしているのですか?

先生 「国際関係と人の移動」が専門で、特に、東アジア国際関係と、在日コリアンの国籍や教育の関係について研究しています。「外交と移民はどのように関係するのか?」と驚かれるかもしれませんが、実は移民の国籍や教育のあり方は、関係各国の外交上の利害に直接関わります。人の国際移動が増えた昨今、「外交と移民」は近年欧米でとても注目されているテーマの一つです。このように、移民をめぐるあらゆる問題を、政治問題として捉えるという点が私の研究の特徴です。

研究にのめり込んだきっかけ

研究テーマを選んだ理由を教えてください。

先生 自分ではどうにもならない制度の壁や、政治と教育の関係について深く探求したいと思ったからです。朝鮮学校出身の私は、大学受験資格がなく受験の「スタート地点」にすら立てていませんでした。また、高校生の時に日本、在日コリアン、韓国の高校生との学外での交流活動を通じて、各国にとって都合の悪い歴史が教科書からそぎ落とされている事実を目の当たりにして、こうした問題の要因について解明したいと思いました。

崔先生の授業で学べること

先生はどのような授業を担当していますか?

先生 多文化共生について教えています。授業では、移民をめぐる問題を、国際関係だけでなく、社会学、歴史学の視座から学際的に、そして、多角的に学びます。

秋学期「多文化共生社会と人間形成特論(2)」の授業風景です。アイスブレイクの風景。バースデーラインといって、1月から12月まで一直線に並んでもらうゲームです。ただし、口頭での会話と筆談はすべて禁止というルールのもとに、互いの誕生日を確認しあわなければなりません。そこで、ジェスチャーで互いの誕生日を確認しあいます。最後に、ひとりひとり誕生日を言ってもらい、順番通りに並べていれば大成功というゲームで、結束力が高まります。この後は、誕生日が近い履修者同士でディスカッションをしました。

授業の内容について、具体的に教えてもらえますか?

先生 一般的に、「多文化共生=国際文化交流」というキラキラとしたイメージで理解されていますが、その実態は必ずしもそうではありません。多文化共生とは「対等な」関係を構築すること。つまり、「対等な状況に置かれていない人」やそうした人々をめぐる制度についてどう考えるかがその基礎にあります。たとえば、授業では、移民や難民が移動先社会で直面する生活、教育、アイデンティティの問題などを学びます。同時に、他者を知ることで、自分についても考えます。つまり、他者に対して自分自身が無意識に持っている偏見やバイアス(先入観)、無意識に抱いている絶対的な価値観と向き合ってもらいます。

秋学期「多文化共生社会と人間形成特論(2)」の授業風景です。授業では、学生同士のディスカッションの時間をとります。この時は、日本の『詳説世界史B』(山川出版社)と朝鮮学校の『現代朝鮮歴史』(学友書房)を比較して共通点や相違点、それらの要因を議論しました。絶対的に正しいと思ってきた教科書に疑問を抱くきっかけとなったようでした。

学生にはどんなことを学んでほしいと思っていますか?

先生 日本を構成する主体は多様であるという認識を持って、人との付き合いを大事にしてほしいと思います。日本は文化的背景が異なる人々によって構成されているにもかかわらず、多くの人が日本は「単一民族」だと無意識に信じ込んでいます。外国にルーツのある人びとも日本の市民/住民であるという認識を持たないかぎり、異なる他者に対し排他的な言動をとってしまいます。

多様性に気づいていないことが問題なのですね。

先生 たとえば、電車で外国人の隣の席には座らない、相手の名前よりも先に出身地を訊ねる、日本在住の外国人に「日本語上手」「お箸の使い方上手」と褒めたことはありませんか。無意識とはいえ、そうした一つひとつの小さな言動が人を傷つけることがあります。このように無意識に基づく偏見を「マイクロアグレッション」といいます。日本は「多様だ」という前提に立って日々生活していけると、マイクロアグレッションは減り、誰もが住みよい社会にしていけると思います。

崔先生が思い描く未来

先生の今の目標を教えてください。

先生 博士論文の書籍化と、海外の大学で研究をすることです。

崔先生からメッセージ

最後に、これから大学への進学を目指している人たちへ、メッセージをお願いします!

先生 大学での学びは、自分で問題を発見して、自分で問いを立て、自分でその問いに答えていくことが最も重要です。どの大学に行くかだけでなく、大学で何を学び、なぜ学ぶのかという点も、あわせて考えていけるとよいですね。頑張ってください。

崔先生、本日は様々な質問にお答えいただきありがとうございました!

プロフィール

崔 紗華

社会学部 教育文化学科

2020年、博士(政治学)を取得。早稲田大学大学院博士後期課程在学中の2015年~早稲田大学グローバルエデュケーションセンター助手、18年~一橋大学大学院法学研究科および国際・公共政策大学院非常勤講師ならびに、桜美林大学リベラルアーツ学群非常勤講師として勤務。20年より同志社大学社会学部教育文化学科助教。

出身地:
神奈川県横浜市
趣味:
ダンス。大学院時代から現在まで、どんなに忙しくても週1回必ずスクールに通っています。心身の健康を保つのに大事な時間です。
休日の過ごし方:
授業準備、研究、研究会への参加、ダンス、カフェめぐりなど。

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