下嶋 篤 教授
文化情報学部 文化情報学科
同志社大学ではどんなことが学べるの?どんな先生がいるの?
実際の研究室を訪ねて、先生にお話を聞きました。
図解の論理と心理を解明
こんにちは。下嶋先生は今、どんな研究をしているのですか?
下嶋先生 私たちは何かを説明したい時に、簡単な図を描いたり、イラストや地図、写真を示したりしますよね。こうした視覚的な表現を使った方が、言葉だけで説明するよりもはるかに分かりやすかったりします。では、なぜそうなのか。私は、ある種の視覚表現がその表現対象と同じ論理に従っているからという「代替論理の理論」によって、この現象を説明しようとしています。研究方法としては、主に数理論理学による視覚情報のモデル化を行っています。
研究にのめり込んだきっかけ
先生はなぜ、この研究をしようと思ったのでしょうか。
下嶋先生 子供の頃から、何か得体の知れないことや不思議なことに出会うと、どうしてそんなものがあるのかをあれこれ頭で考えて、理屈で説明したいという衝動がありました。それが高じて、今でも何か理論を考えて不思議な現象を説明して、それを人に聞いてもらって「ほほう」と思ってもらうことを喜びにしています。今自分が取り組んでいる研究もその一環ですし、研究室の学生にもそんな研究をして、私に「ほほう」と思わせてほしいと思っています。
いま研究室で推しの学び
なるほど。研究室の学生は、どんな現象について研究しているのですか?
下嶋先生 研究室で主に扱っている「不思議な現象」というのは、「ある種の視覚表現は非常に効果的だが、そうでないものもある」という現象です。視覚表現研究室という名称もそこから来ています。この現象は、ありとあらゆるところに見られるものなので、学生たちの扱う視覚表現も、世界史の資料集の地図、日本画の空白部分、鉄道路線図、マンガの描き文字、動画広告の残り時間表示、広告写真、バラエティ番組のテロップ、商品説明WEBページの背景画像など様々です。
鉄道路線図を読み取っている人の視線の動きを、視線計測器で記録している様子。
本当に様々なものがありますね。研究テーマはどうやって決めるのですか?
下嶋先生 テーマはなるべく自由に選ばせ、学生の思いつきも積極的に採用しながら一緒に研究を進めます。学生が主体的に研究を進めるかどうかで、そこから学べる内容も大きく変わるからです。この方針の影響のためか、誰か一人ぐらい、私の「代替論理の理論」の研究をやってくれても良さそうなのに、これまで誰もやっていません。
学生と研究の相談をしている様子。
この研究が持つ可能性とは
この研究は、どんなことに役立つのでしょうか。
下嶋先生 これからの困難な時代にあって、自分と考え方が違う相手や、利害が衝突する相手と分かりあって連携することはますます重要になります。そのためには、様々な工夫をして相手に分かってもらう努力が必要で、その強力な手段の一つが情報の視覚化であり、視覚化に基づく説明だと考えています。ところが、コミュニケーションにおいて表現を工夫することの重要性、中でも視覚表現を用いることの重要性は、皆が分かっているようで心底から分かっていないことが多いのです。
そのことを学んだ卒業生は、どのような分野で活躍できますか?
下嶋先生 視覚表現の研究を通じて表現を工夫することの重要性を理解しているため、社会の隅々における大小の分かり合いのプロセスにおいて、職種にかかわらず活躍できます。
下嶋先生が思い描く未来
先生の未来の目標は?
下嶋先生 さきほどの質問で答えたような学生をたくさん輩出することです。すなわち、社会における分断を乗り越え、分かり合いを促進することによって、困難な時代に立ち向かっていける人間を社会に送り出すことです。また個人的には、今取り組んでいる図表現の代替論理の理論を完成させ、学界に「ほほう」と言わせたいですね。
下嶋先生からメッセージ
最後に、これから大学への進学を目指している人たちへ、メッセージをお願いします!
下嶋先生 皆さんも気づいているように、気候変動とそれに伴う様々な問題に直面して、人間の社会はどうにもならないところに来ています。私も含めて言えることですが、「自分は社会をより良い場所にできる」という信念を持ち続け、そのために必要な知識と技術を手に入れましょう。
下嶋先生、本日は様々な質問にお答えいただきありがとうございました!
プロフィール
下嶋 篤
文化情報学部 文化情報学科
1985年同志社大学文学部卒業、88年同志社大学大学院文学研究科修了。96年インディアナ大学哲学科にて博士学位取得。ATR知能映像研究所奨励研究員、98年〜北陸先端科学技術大学院大学助教授を経て、2005年同志社大学文化情報学部助教授。08年〜同教授、19年より同学部長。
- 出身地:
- 兵庫県
- 趣味:
- コーヒーを焙煎して飲む、お香を焚いて聞く。
- 休日の過ごし方:
- 家族とおいしいものを食べる、研究以外の軽い読み物を読む。